【秋田県】実直な県民性が独特の文化を守り続ける

本州北部、日本海に位置する秋田県は温泉に恵まれており、田沢湖を一望できる田沢湖高原温泉郷や、秋田駒ケ岳に広がる秋田駒ケ岳温泉、秘湯と呼ばれる乳頭温泉など、さまざまな景色を楽しむことができます。
県の中央付近にある角館市は、木造の武家屋敷が立ち並ぶ歴史地区があり今も残る城下町の面影を感じられる観光名所です。春には枝垂れ桜の街並みが美しく、冬には深い雪景色へと変わりゆく風景も見どころです。

日本海側気候の中でも特徴として沿岸部の冬季の降水量はそれほど多くありませんが、内陸部では低温のためおよそ90%の地域が特別豪雪地域に指定されいます。また、冬季の日照時間は全都道府県の中でも最も短いことが特徴です。夏季は高温多湿で梅雨明けのないまま秋を迎えることも珍しくありません。

人口は96万9462人(2019年)、人口増減率は-1.47%と6年連続で全国最下位で最も人口減少が進んでいる地域の一つです。その一方で、人口当たりの刑法発生率が最も低い都道府県となっており犯罪件数は最少となっています。

秋田方言や民俗芸能、祭り、食文化、伝統工芸など独特の文化が色濃く残っているのも特徴です。

世界的にも注目のモコモコふわふわが愛らしい「秋田犬」

フィギュアスケートの平昌五輪金メダリストであるロシアのマリーナ・ザキトワ選手に贈呈されたことや、プーチン大統領が飼っていることでも有名な秋田犬。モコモコの毛並みにガッチリとした逞しい体型、太くてくるりんとした尻尾がとても愛らしい秋田犬は、国定天然記念物に登録されています。

性格は忠誠心が厚く従順で、飼い主に寄り添う性格です。知性に優れ頭が良く、警戒心も高いので番犬としても活躍。東京・渋谷駅の待ち合わせスポットとされている「忠犬ハチ公」も秋田犬であると言われています。

日本で一番深い神秘の湖「田沢湖」

仙北市にある田沢湖は日本で一番深いとされる湖です。遊覧船や足漕ぎボートの貸し出しもあり、美しいブルーの湖面を間近に感じることができます。湖のほとりにあるのは辰子姫伝説の「たつこ像」で、龍となった辰子姫が住むおかげで、田沢湖は冬の間も凍らない湖として知られてるそうです。また、田沢湖の北側には「御座石神社」があり、美容や縁結びにご利益があるとされ女性に人気のパワースポットになっています。

実はありがたい神さまのだった「なまはげ」

男鹿半島周辺で行われてきた「なまはげ」は、大晦日に「泣く子はいねがぁー?悪い子はいねがぁー?」と言いながら里の家々を回る有名な伝統行事です。
実は、なまはげは荒々しく恐ろしい風貌とは裏腹に、村内安全・五穀豊穣・大漁満足・悪疫除去の神の使者で、一年の厄を祓い新年を迎えるにあたっての祝福の意味もあるありがたい行事とされています。男鹿市内にある「なまはげ館」には、なまはげをテーマにした男鹿の歴史や風土が紹介されており、多種多様なお面が飾られています。
また秋田市内では、なまはげが登場するイベントを開催する飲食店などもあり、秋田ならではの伝統文化を体験することができます。

伝統工芸美と実用性を兼ね備えた「曲げわっぱ」

大館市に伝わる「大館曲げわっぱ」は、昭和55年に国の伝統工芸品に指定されました。弾力性に富み美しい木目を特徴とする天然秋田杉を薄く剥いで、熱湯につけ柔らかくして曲げ加工を、山桜の皮で縫どめをし完成します。白木の特徴を活かした曲げわっぱは、ご飯の水分を程よく吸収し、冷めても美味しく、天然杉の香りが食欲をそそり杉の抗菌効果でご飯が傷みにくく、ご飯を詰めてから常温でも一昼夜痛まずに持つほどです。

2時間程度から出来る「曲げわっぱ製作体験」などもあるので、興味のある人はお出かけ前に要チェックです。

一度は行ってみたい秘湯「乳頭温泉郷」

十和田・八幡平国立公園 乳頭山麓に点在する七湯が「乳頭温泉郷」と呼ばれており、独自の源泉を持っています。その泉質は多種多様で十種類以上の源泉があり、深く茂るブナの原生林を走りながら湯めぐりを楽しむのも一興です。

乳頭温泉郷の中でも最も深い歴史をもち、秋田藩主の湯治場だったのが「鶴の湯」です。今なお護衛の武士が詰めた茅葺き屋根の長屋「本陣」が残っています。名物のオリジナル味噌で仕立てた山の芋鍋は、ぜひ味わってもらいたい逸品です。炊きたてのあきたこまちの美味しさにも驚かされます。

寒い地域ならではの知恵が詰まった食文化

いぶりがっこ

漬物として使う干し大根が凍ってしまうのを防ぐために、囲炉裏の上に吊るして燻し、米ぬかで漬け込んだのが「いぶりがっこ」です。雪国ならではの伝統的な漬物として、たくあんとはまた違った独特の香ばしい香りが特徴です。
日本酒のあてによく合いますが、最近ではクリームチーズなどを用いてアレンジして、ワインとのマリアージュを楽しむ人も増えています。

きりたんぽ鍋

うるち米を潰して木の棒に巻きつけ、ちくわ状に焼き上げた「きりたんぽ」と、地鶏、せり、きのこ、ねぎ、ごぼうなどを一緒に煮込んだ鍋料理です。

比内地鶏

昭和17年に天然記念物に指定されている、比内鶏(オス)とロード種(メス)の後輩一台雑種。基本は放飼いまたは平飼いで飼育されます。赤みが強く適度な歯ごたえで、コクと香りがあり、噛みしめるほどに味が出てくるのが最大の特徴です。名古屋コーチン・薩摩地鶏と並び、日本三大美味鶏の一つです。

じゅんさい

水面に葉を浮かべる水草の一種。ゼリー状のぬめりに覆われており、つるんとした食感が特徴です。4月〜6月ごろが旬で、収穫が大変なこともあり比較的高級な食材として扱われています。

ハタハタ

秋田県の県魚で、焼き魚・煮魚として調理される他、干物、塩蔵、味噌漬けなどにもされます。
ハタハタの卵は、虹色のカラフルな色をしており「ブリ子」と呼ばれ、珍重されています。本来はネバネバとした独特の食感をもつ卵ですが、塩焼きにするとプチプチとした食感に変化するので、是非さまざまな調理方法で味わってみてください。

まとめ

秋田県には美しい自然がいっぱいなだけでなく「秋田美人」という言葉があるように、「秋田杉」「秋田米」「秋田の美酒」など、秋田という枕ことばが、何故かしっくりとくる県です。
また、誠実で温厚、ねばり強さとバイタリティをもつ県民性は、地域に根付いた独特の文化を実直に守り続け、秋田を知らない観光客をも楽しませてくれます。

小高朋子(kotaka)
1982年、神奈川県生まれ。アパレル、映像制作会社を経てフリーのライターへ。農業・食・旅を中心に取材記事を執筆する。
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